問題は、突然起きているわけではない
- 6月23日
- 読了時間: 3分
労務トラブルの相談を受けていると、時々感じることがあります。
問題は、ある日突然起きているように見えるけれど、実際にはその前から少しずつ始まっているのではないか、ということです。
ある日、社員が退職を申し出る。
ある日、ハラスメントの相談が出る。
ある日、職場の人間関係が大きく崩れる。
表面だけを見ると、突然起きたように見えます。
ただ、よく話を聞いていくと、その前から小さな兆候があったことが少なくありません。
報告が少なくなっていた。
会話が減っていた。
誰かが我慢していた。
小さな不満が、そのままになっていた。
その時点では、大きな問題には見えません。
忙しい時期なら、後回しになることもあります。
「まあ、今は様子を見よう」
そう考えるのも、自然なことです。
ただ、組織というものは不思議なもので、放っておくと自然に良くなることはあまりありません。
むしろ、人も組織も、少しずつ楽な方へ流れていくものなのかもしれません。
言いにくいことは言わなくなる。
面倒なことは後回しになる。
確認すべきことが省略される。
最初は小さなことです。
でも、その小さな省略が積み重なると、いつの間にか会社の空気が変わっていきます。
物理学には、エントロピー増大の法則という考え方があります。
簡単に言えば、物事は放っておくと整うのではなく、少しずつ乱れていく、という考え方です。
もちろん、会社組織を物理現象と同じように語ることはできません。
それでも、いろいろな会社を見ていると、この考え方は組織にもどこか通じるものがあるように感じます。
組織は、何もしなくても整っていくわけではありません。
むしろ、何もしなければ少しずつ乱れていく。
だからこそ、問題が小さいうちに気づくことが大切になります。
ただ、ここで難しいのは、小さな違和感というものは、なかなか言葉にしづらいことです。
何かおかしい。
少し空気が悪い。
最近、会話が減った気がする。
そういう感覚は、数字には出ません。
就業規則にも書かれていません。
でも、現場では確かに存在しています。
そして、その違和感を放置していると、ある日、はっきりした問題として表に出てくることがあります。
退職。
メンタル不調。
人間関係の悪化。
ハラスメント相談。
労務トラブルは、結果として出てきます。
でも、その原因はもっと前から、少しずつ積み重なっていることが多いのだと思います。
会社が大きくなると、なおさらです。
人が増える。
拠点が増える。
価値観の違う人が増える。
そうなると、今まで自然に伝わっていたことが、伝わりにくくなります。
社長の目が届いていた頃には保てていた空気も、人数が増えるとそれだけでは維持できなくなります。
成長することは、もちろん良いことです。
ただ、会社を大きくすることと、組織を整えることは、同じではありません。
人を増やせば、自然に組織になるわけではない。
そこには、考え方やルールや関わり方を、少しずつ整えていく作業が必要になります。
大きなトラブルが起きたとき、私たちはどうしても「その出来事」だけを見てしまいます。
でも本当は、その出来事に至るまでの小さな流れを見る必要があります。
なぜ相談しにくかったのか。
なぜ不満が溜まったのか。
なぜ誰も止められなかったのか。
そこを見ないまま処理だけしても、同じような問題がまた起きることがあります。
問題は、突然起きているわけではない。
そう考えるだけで、会社の見え方は少し変わります。
大きな問題になる前に、小さな違和感のうちに気づくこと。
そして、見なかったことにしないこと。
組織を良い状態に保つというのは、特別なことをするというより、そうした小さな乱れを、その都度少しずつ整えていくことなのかもしれません。
